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鼠径ヘルニアの治療法

鼠径ヘルニアの唯一の治療法は手術、と書きましたが、その手術方法はいくつかあります。

大きく

①鼠径部切開法(前方到達法)

と、

②腹腔鏡下手術

に分かれます。

まず、①鼠径部切開法についてですが、19世紀後半に近代的な手術の基礎が築かれました。バッシーニ(Bassini)というイタリアの外科医が1884年に弱くなった筋肉の壁をしっかりと縫い合わせる手術を考案しました。

しかし、術後の疼痛や再発率の高さからその後も様々な手術法が考案されてきました。20世紀後半には人工の網(メッシュ)で穴を塞ぐ方法が開発され、痛みが少なく再発の少ない治療が可能になりました。

現在でも、後述する腹腔鏡下手術の適応とならない患者様にはリヒテンシュタイン法というメッシュを用いた手術法が推奨されており、当院でも採用しています。

 

つぎに、②腹腔鏡下手術についてです。現在、世界的にも鼠径ヘルニアの手術法として第一選択とされています。専用のカメラと手術器具を挿入し、外科医がカメラに映し出されたモニターを見ながら、鼠径ヘルニアの修復を行う方法です。ただし、腹腔鏡下手術にも術式が複数あり、患者様の病態によって使い分ける必要があると考えます。

1. TAPP法(タップ法)

TAPP法は、「Trans-Abdominal Pre-Peritoneal repair(経腹的腹膜前修復法)」の略称で、お腹の中(腹腔内)からアプローチする鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術です。

当院ではおへそと左右の腹部に5mmの穴を合計3箇所開け、胃や腸などの臓器が収められている腹腔内に入ります。腹腔内から腹膜(お腹の内側を包む膜)を切開して人工メッシュを用いてヘルニアの修復を行います。

この術式は、広い視野で患部を観察できるため、症状があるのとは逆側に潜在的な鼠径ヘルニアがあるかどうかが確認できます。また、再発例、巨大なヘルニア症例などにも対応しやすいという利点があります。

2. TEP法(テップ法)

TEP法は、「Totally Extra-Peritoneal repair(完全腹膜外修復法)」の略称で、腹腔内には入らず、筋肉と腹膜の間にある空間(腹膜外腔)からアプローチする方法です。

当院では単孔式TEP法を採用しており、おへそに1.5cmの傷を1箇所開け、腹膜外腔にカメラと器具を挿入して、人工メッシュを用いてヘルニアの修復を行います。この術式は傷が一つで済むという利点のほか、腹腔内に手術操作が及ばないため、腸などの臓器を傷つけるリスクが少なく、術後の腸閉塞や癒着が起こりにくいという利点があります。

3. LPEC法(エルペック法)

LPEC法は、「Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure(腹腔鏡下経皮的腹膜外閉鎖術)」の略称で、腹腔内からの手術ですが、メッシュを使わずに鼠径ヘルニアを修復する術式です。

お子様の鼠径ヘルニアに主に採用されている術式です。お子様のヘルニアは、お腹の壁が弱くなって出てくるタイプではなく、体格も今後大きくなっていくので、メッシュでお腹の壁を補強する訳にはいきません。また、今後妊娠を希望される患者様にも良い適応と考えられます。

当院ではおへそに5mmの穴を1箇所、右側腹部に3mmの穴を1箇所開け、ヘルニアの袋を根元で縛る手術を行います。妊娠希望がある方や体内に大きな異物を挿入することに抵抗のある方(本法でも小さな異物である糸は使用します)、お子様(当院では中学生以上)にも適応できるという利点があります。

当院はこれら4つ(鼠径部切開法+腹腔鏡下手術3法)の術式を、患者様の病態や、全身状態などを考慮し選択することで、オーダーメイドの治療を日帰りで受けていただけます。

開院した際にはお気軽にご相談ください。

さらに、最近の話題として、ロボット支援下鼠径ヘルニア手術もあります。

4. ロボット支援下手術

手術支援ロボットを用いて、前述のTAPP法を施行する術式です。手術支援ロボットは3Dカメラでの手術となるうえ、手ブレを抑えられ、先端が自由に回転することから、縫合などの操作が容易であるという利点があります。2026年6月より保険適応となりました。

但し、医療資源を圧迫し、運用コストが高額であることや、傷が通常の腹腔鏡下手術より大きくなること、手術時間も通常の腹腔鏡下手術より長くなるといった側面があります。一方、手術成績は通常の腹腔鏡下手術と変わらないことから当院では採用しておりません。

もちろん、当院で手術の説明を受け、ロボット支援下手術を希望された患者様には、既に術式経験のある病院をご紹介させていただきます。

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